「高校生の子どもが不登校になってしまった!原因はなに?」
「勉強は?進路は?どう対応すればいいの…」
お子さんがある日突然学校に行けなくなってしまい、原因や対応方法がわからず悩んではいませんか?
不登校の原因はさまざまで、本人も自覚がないままストレスを溜め込んでいることもあり、無理に学校に行かせると逆効果になることがあります。
とはいえ、親としてはこのまま時間が過ぎてしまうと進級や卒業はどうなってしまうのか、不安な気持ちも大きくなるものですよね。
そこで本記事では、高校生の不登校の原因や対応方法について、文部科学省の最新データ(令和5度版)をもとに解説します。
不登校の高校生の進路や頼れる専門機関もご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 不登校の割合
▶︎高校生の2.4%、42人に1人程度 - 不登校の原因
▶︎メンタル不調や学業不振、いじめなど - 不登校の対応
▶︎まずはゆっくり休むことが大切、その後学校と連携、専門機関を頼る - 不登校の進路
▶︎進学・就職どちらも可能。中退後も高卒認定を取れば大学受験可能
高校生の不登校の背景と現状

まずは、文部科学省の最新データ(令和5年度)を参考に、高校生の不登校の背景と現状について詳しくご紹介します。
不登校の定義
文部科学省は不登校の定義について、病気や経済的な理由以外の原因で年間欠席日数が30日以上になった状態としています。
- 何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いた者
(引用:文部科学省「不登校の現状に関する認識」)
ちなみに「ひきこもり」については、厚生労働省で定義が定められていて、他者と交わる社会参加を回避し、6ヶ月以上家庭にとどまり続けている状態です。
- さまざまな要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヶ月以上にわたっておおむね家庭にとどまり続けている状態
(引用:厚生労働省「ひきこもりの定義など」)
年間30日以上の休みが続き、他者との交流も回避した上で、家庭に6ヶ月以上留まっている状態であれば、不登校でひきこもりの状態といえるでしょう。
不登校の人数・割合
文部科学省の調べによると、2024年度の不登校の人数は過去最多にのぼり、小中高合わせると40万人以上になります。
学校 | 不登校の人数 |
---|---|
小学校 | 13万370人 |
中学校 | 21万6,112人 |
高校 | 6万8,770人 |
2024年度の全高校生の人数は、290万6,921人となっているため、不登校の割合は2.4%、42人に1人程度といえます。
しかし、上記の人数に年間欠席数が29日以下の人や発達障害などで学校に通えない人は含まれていません。
そのため、不登校ぎみの人や学校に苦手意識を持つ高校生はもっと多いと考えられます。
高校生の不登校の原因とは
文部科学省の2024年度の調査によると、高校生が不登校になる原因として、以下の理由が挙げられます。
- 無気力、やる気が出ない:32.8%
- 生活リズムの不調:26.7%
- 不安、抑うつ:16.7%
- 学業不振・課題の未提出:15.4%
- いじめを除く友人関係のトラブル:11.0%
(参考:文部科学省「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」)
「無気力、やる気が出ない」と「不安、抑うつ」を合わせると49.5%にのぼり、メンタル不調が登校に大きな影響を及ぼしていることが考えられます。
しかし、不登校になった生徒の中には、本人も何が原因か自覚しないまま無気力や不安が引き起こされていることもあり、対応に困っている親御さんも少なくありません。
また、文部科学省が不登校に関わる原因を「学校・家庭・本人の事情」の3つに分類して集計しているので、参考までにご紹介します。
(引用:文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」)
学校に関する原因
人数(人) | 割合 | |
---|---|---|
いじめ | 600 | 0.9% |
いじめを除く友人関係をめぐる問題 | 7,571 | 11.0% |
教職員との関係をめぐる問題 | 1,134 | 1.6% |
学業の不振・課題の未提出 | 10,565 | 15.4% |
学校のきまり等に関する問題 | 1,381 | 2.0% |
入学、転編入学、進級時の不適応 | 4,133 | 6.0% |
とくに、いじめに関しては小学校から高校まで大きな課題となっており、認知件数は過去最多となっています。
また、学業不振・課題の未提出なども大きな割合を占めており、とくに進学校のハードスケジュールは、子どもの大きな負担となっていることがあるため注意が必要です。
家庭に関する原因
人数(人) | 割合 | |
---|---|---|
家庭生活の変化 | 3,441 | 5.0% |
親子の問題 | 4,675 | 6.8% |
家庭に関する要因としてあげられるのは、親の離婚や失業、家族間の不和などが挙げられます。
また、過保護や過干渉、コミュニケーション不足といった、親子の関わり方が原因で不登校になっているケースがあることも事実です。
思い当たることがあれば、専門機関などの第三者に客観的な意見を聞いてみると、解決策が見つかりやすくなるでしょう。
本人の事情に関する原因
人数(人) | 割合 | |
---|---|---|
生活リズムの不調 | 18,369 | 26.7% |
あそび・非行 | 3,469 | 5.0% |
やる気が出ない | 22,541 | 32.8% |
不安・抑うつ | 11,503 | 16.7% |
障害(疑い含む)に起因する問題 | 1,703 | 2.5% |
障害(疑い含む)以外の個別の配慮に関する問題 | 2,023 | 2.9% |
本人の事情に関する原因は、いくつもの理由が絡んでいる場合が多くあります。
また、なぜ不登校になったのか理由が明確でないことも多く、親としてはなかなか理解し難いというのが実情です。
しかし、無気力型の不登校の場合、そのままひきこもりに発展する危険があります。
怠けてみるように見えても、まずは子どもの気持ちを理解するよう努めることが大切です。
不登校の高校生へ親ができる対応とは

高校生の子どもが不登校になると、親としてどう関わればいいのか、頭を悩ませる親御さんも多いのではないでしょうか?
「このままではやばい」と思い、無理に学校に行かせたり、頭ごなしに説教したりすれば、事態を悪化させることにつながりかねません。
先述したように、なぜ不登校になったのか本人も自覚できてないことがよくあるからです。
とくに、高校生は大人と子どもの狭間の時期にあたり、環境の変化や人間関係、将来への不安などさまざまな悩みを抱えやすい時期でもあるため、周りの大人は「気長に寄り添う姿勢」が大切になってきます。
ここからは、不登校の高校生に親ができる4つの対応方法をご紹介します。
休んでもいいと伝える
学校に行かない日が続いてくると、授業の遅れや単位、周りの目が気になってしまう親御さんも多いと思います。
しかし、学校に行けないことを一番気にして悩んでいるのは、他の誰でもない本人です。
「学校に行ってほしい」という親からのプレッシャーを感じれば、余計に悩み塞ぎ込んでしまう可能性があります。
まずは、気持ちを楽にしてゆっくり休めるように、親御さんから「休んでもいいよ」と伝えてあげましょう。
また、不登校の理由についても、本人が自然と話してくるまで待ってあげることが大切です。
決して不登校になっていることを責めたりせず、いつもと変わらない態度で接することを心がけましょう。
「学校に行かない」という選択をした子どもの意思を尊重し、ゆっくり休める環境を整えることが重要です。
子どもの努力を認める
子どもが「学校を休みたい」と言い出した時は、すでに精神的に限界に達していることが多いです。
たくさん悩んで頑張ったけどどうすることもできず「学校に行かない」という選択を取ることで、自分を守ろうとしている可能性があります。
まずは、以下のような言葉がけで、その努力を認めてあげましょう。
- ずっと頑張ってたんだね
- 大変だったんだね
自分しか知らない努力を認めてもらえるだけで安心感につながり、次のことを前向きに考えるきっかけになっていきます。
子どもの声に耳を傾ける
子どもの学校の相談を、ついつい軽く受け流してしまう親御さんも多いのではないでしょうか?
大人からすると子どもの悩みは可愛く感じてしまい、ついつい適当に受け流してしまいがちです。
しかし、本人たちにとっては深刻な悩みであり、軽く受け流されると傷ついてしまうこともあります。
軽くあしらったり頭ごなしに否定するのではなく、まずはしっかり子どもの話に耳を傾けてあげましょう。
具体的なアドバイスがなくても、真剣に話を聞いてくれるだけで不安を払拭することができます。
他の子どもとの比較を避ける
「周りのみんなは学校に行っているのに…」「うちの子だけ学校に行けない」
“不登校”というイレギュラーが起こってしまうと、ついつい普通に登校できている子と自分の子どもを比較してしまう親御さんも多いと思います。
しかし、それを言われた子どもが前向きな気持ちになることは想像し難いですよね。
不登校になっている子どもが目を向けてほしいのは、周りのみんなではなく、子ども自身の内側です。
もちろん「昔はそんなことなかったのに」と過去の子どもと比較するのもおすすめできません。
今目の前にいる子どもの気持ちや状況に寄り添い、今できるサポートを考えてあげることが大切です。
学校生活復帰をサポートする方法

学校と連携を取る
不登校から学校生活に復帰するためには、学校との連携はとても重要です。
担任の先生やスクールカウンセラーとこまめに連絡を取って信頼関係を築いておくことで、お子さんの負担を減らした復帰方法を整えることができます。
- 別室登校はできるのか
- 週に何回の登校からスタートするのか
- 学校から受けられるサポート内容
上記の内容をあらかじめ確認できておくと、スムーズに対応できるでしょう。
また、家庭での様子も学校に伝えておくと、復帰の際、先生も円滑に対応できてお子さんも安心して通いやすくなります。
別室での登校を検討する
復帰後、いきなりみんなと一緒に教室で授業を受けることが難しいと感じるなら、別室での登校を検討するのもおすすめです。
- 保健室
- 相談室
- 図書館
- 生徒指導室 など
本人が安心して過ごせる場所に登校できれば「学校に行けない悩みや罪悪感」を和らげることも期待できます。
しかし、学校によって別室登校は出席扱いにならないケースもあるため注意が必要です。
別室登校のルールや進級・留年の条件については事前に確認し、学校生活復帰へのステップと考えて学校側と相談しながら進めていきましょう。
専門家やカウンセラーへ相談する
親子での話し合いが難しいと感じたり、不登校の原因が特定できない場合は、専門家やカウンセラーに相談するのも良いでしょう。
最近は、不登校専門のカウンセラーや心理相談士が増えていて、スクールカウンセラー以外の相談窓口が広がっています。
不登校本人だけでなく親の悩みにも寄り添ってくれるため、サポート側の精神的負担の軽減にも効果的です。
また、社会福祉の観点から子どもを取り巻く環境に働きかけたり、関係機関と連絡・調整をしたりするスクールソーシャルワーカーという専門家もいます。
第三者の意見も取り入れつつ、関係者が協力してサポートできる体制を整えていくことが、子どもにとって安心できる環境作りにつながります。
不登校支援をしている団体に相談する
専門家・カウンセラーと同じく、不登校支援をしている団体に相談するのもおすすめです。
公的・民間含めて多くの支援団体があり、不登校中の学習支援や生活改善、親子の不安解消をサポートしてくれます。
- 市区町村の子育て相談窓口
- ひきこもり地域支援センター
- 教育支援センター
- らいさぽセンターなどの民間支援団体 など
らいさぽセンターでは、カウンセリングや高校の単位取得をサポートしてくれるだけでなく、大学受験のサポート、自社の通信制高校での高校卒業プランなど、幅広いサポートで一人ひとりに合った支援をおこなってくれます。
初回相談は無料となっているので、気になる方は一度気軽に相談してみてくださいね。
学校以外の学びの場を検討する
学校に復帰できない理由の1つとして、「勉強についていけない不安」という気持ちがあります。
休んでいる期間の勉強を取り戻したいなら、フリースクールのような学校以外の学びの場を検討してみましょう。
フリースクールであれば、通った日数を学校の出席として認めてもらえる場合があり、留年の心配を減らすことにもつながります。
また、家や学校以外の人と関わることで視野が広がり、気持ちも前向きになりやすいこともメリットの1つです。
まずは「◯◯市 フリースクール」と検索して、近くのフリースクールを探してみましょう。
外出が難しい場合であれば、家庭教師という選択もおすすめです。
転校も視野に入れる
不登校から復帰する方法として「転校」を検討するのも一つの手です。
今まで通っていた学校に固執する理由がなければ、心機一転して再スタートを切るきっかけになるでしょう。
環境が変わることで気持ちも入れ替わり、学校に通えるようになるケースもよくあります。
しかし、転校したからといって必ず不登校が改善されるとは限りません。
本人の希望も聞きながら、慎重に調整することが大切です。
また、高校の場合、進級・卒業に必要な出席日数や欠席日数の上限などがあるため、どうしても復帰が難しいケースもあります。
高校卒業を目指すなら、学校復帰を目指すと同時に他に転入学できる高校がないか探しておくと、いざという時にすぐ対応できて安心です。
不登校の高校生の転校先は

不登校からの復帰をサポートする方法として「転校」を視野に入れることもおすすめだとお伝えしました。
高校の場合、全日制の学校以外に、通信制・定時制などの選択肢も広がるため、自分に合った学び方に変えることも可能です。
通信制 | 全日制 | 定時制 | |
---|---|---|---|
登校頻度 | 週数回〜年数回 | 平日毎日 | 平日毎日(夕〜夜) |
制度 | 単位制 | 学年制 | 学年制・単位制 |
卒業年数 | 最短で3年 | 最短で3年 | 3〜4年 |
なかでも通信制高校は、オンラインの自宅学習がメインとなっており、週に数回、年数回のスクーリング日だけ登校する形となっていて、不登校の子どもも多く受け入れています。
学習ペースも自分で決められるため、周りに合わせる必要がなく「全日制高校は合わない」と感じる人にも通いやすい学校といえるでしょう。
学校によってさまざまな特色があるため、自分に合った学校を見つけることが、通信制高校を卒業するポイントになります。
通信制高校についてはこちらでも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
▶︎通信制高校とは?どんな学校?仕組みや特徴をわかりやすく解説!
不登校の高校生の進路

不登校になったからといって、進路の選択肢が大きく狭まるわけではありません。
卒業できれば、大学や専門学校への進学も可能で、就職するという道もあります。
ここからは、不登校の高校生の進路について、進学と就職、それぞれ詳しく解説します。
大学や専門学校への進学
高校卒業の資格が取得できれば、大学や短大、専門学校への進学が可能です。
卒業するためには、以下の条件をクリアする必要があります。
- 高等学校に3年以上在籍
- 74単位以上の取得
- 学校行事などの特別活動に30単位以上参加
学校によっては、別室登校でも単位取得を認めてくれるなど、不登校でも卒業できるようにサポートしてくれる場合があります。
本人に進学の意思がある場合は、学校側とよく相談するようにしましょう。
就職する
高校卒業後、就職するという選択肢もあります。
文部科学省の調査によると、2025年3月に卒業予定の高校生の就職希望率は13.7%となっており、就職内定率は99.2%です。(参考:令和7年3月高等学校卒業予定者の就職内定状況(令和6年10月末現在)に関する調査について)
つまり、10人に1人は就職していることがわかります。
不登校だったことが就職において必ずマイナスになるわけではありません。
本人が希望している場合は、就職を前向きに検討するのも良い選択です。
しかし、不登校になった原因を解決できないままでは、社会人になってからの仕事に影響が出る可能性があります。
安定して働き続けるためには、不登校の原因と向き合い、自分に合った職場環境を見つけることが大切です。
就職活動をサポートしてくれる「地域若者サポートステーション」や「わかものハローワーク」などの支援機関を利用するのもおすすめです。
高校中退でも大学進学は可能?

不登校で高校を中退せざるを得なくなった場合でも、「高卒認定」を取得すれば大学進学は可能です。
高卒認定とは、文部科学省が主宰する国家資格で、合格することで「高校卒業者と同程度の学力がある」と認められます。
- 受験時期:年2回(8月・11月)
- 受験資格:満16歳以上の高校を卒業していない人
- 試験日程:2日間
- 合格に必要な科目数:必修8〜9科目
必修科目を一度で全て合格する必要はなく、1科目から受験可能です。
合格科目に有効期限もないため、自分のペースで挑戦することができます。
高校卒業資格とは異なるため、合格しても最終学歴は「中卒」となりますが、大学・短大・専門学校などに進学して卒業すると更新されます。
高校生の不登校に関するまとめ

今回は、不登校の高校生の原因や対応について、進路や支援方法なども交えて詳しくお伝えしてきました。
内容を簡単におさらいします。
- 不登校の割合
▶︎高校生の2.4%、42人に1人程度 - 不登校の原因
▶︎メンタル不調や学業不振、いじめなど - 不登校の対応
▶︎まずはゆっくり休むことが大切、その後学校と連携、専門機関を頼る - 不登校の進路
▶︎進学・就職どちらも可能。中退後も高卒認定を取れば大学受験可能
高校生の不登校は、小中学校と異なり留年や中退の可能性が出てくるため、本人だけでなくその親御さんも不安や焦りを感じやすくなります。
しかし、無理に登校させたり、頭ごなしに説教したりすると、かえって心身のバランスを崩し、学校復帰が遠のく恐れがあるため注意が必要です。
まずはしっかり心と体を休めてから、不登校の原因と向き合い、今できることを考えてみましょう。
もしも学校や家庭だけで解決することが難しい場合は、民間支援団体などの専門機関を利用するのもおすすめです。
本人の意思や気持ちを尊重しながら、ベストな解決方法を見つけていきましょう!