
不登校の中学生は年々増加傾向に
近年、不登校の中学生が急激に増加しています。文部科学省が公表している「不登校児童生徒に関する調査結果」では、年間で約13万人を超える中学生が不登校の状態にあることが示されています。これは全国の中学生のうち、約40人に1人が、病気や経済的理由ではない形で年間30日以上学校を欠席していることを意味します。
かつては「珍しいこと」と見られていた不登校が、現代では決して例外的な現象ではなく、多くの家庭や学校で直面する社会問題となっています。
特に2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる影響は大きく、
長期にわたる臨時休校やオンライン授業の急速な普及は、子どもたちの学習リズムや生活習慣に混乱をもたらしました。
これに加えて、人と会う機会の減少や友人との交流が制限されたことから、孤立感を深め「学校に行かない」という選択をする生徒が増えたのです。
また、社会全体での価値観の多様化も影響しています。以前は「学校に通うことが当たり前」という考え方が強かったものの、現代では「無理に学校に行かなくてもよい」「多様な学び方があっていい」という認識が広まりつつあります。
こうした価値観の変化が、子どもたちにとっては不登校を選択しやすくする土壌となっているのです。
さらに、SNSやスマートフォンの普及により、人間関係の形態が変わったことも見逃せません。
オンライン上でのトラブルや誹謗中傷が原因で学校に行けなくなるケースも増えています。これらの複合的な要因が重なり合い、不登校の中学生は増加傾向にあります。
中学生が不登校になる主な理由と心の背景
中学生は思春期のただ中にあり、心身の変化が大きい時期です。自我の確立、ホルモンバランスの乱れ、身体の成長だけでなく、学業や人間関係のプレッシャーなど、様々なストレス要因が重なりやすいのが特徴です。こうした複雑な環境の中で、学校生活に対する不安やストレスが積み重なると、不登校に至ることがあります。
いじめや友人関係のトラブル
多くの不登校の中学生が直面する問題は、人間関係にまつわる悩みです。クラスメイトからの孤立、仲間はずれ、陰口や無視、さらにはSNS上での誹謗中傷など、表に出にくいトラブルが子どもたちの心を深く傷つけています。
こうした問題は本人にとっては非常に重く、学校に行くことが恐怖やストレスの原因となり、「教室に入れない」「行くのが怖い」と感じる子も少なくありません。
特に女子中学生は、感受性が高く繊細なため、友人関係のわずかなすれ違いやトラブルが心の負担となりやすい傾向があります。
SNSの普及により、学校外でもいじめが続くケースがあり、逃げ場を失ってしまうこともあります。
教師との相性や指導スタイルの不一致
学校の環境において教師との関係も重要な要素です。担任や部活動の顧問など、日常的に関わる大人との相性が悪いと、子どもは精神的に追い詰められ、学校に行きづらくなります。
厳しすぎる指導、感情的な叱責、一方的な価値観の押し付けは、子どもの自尊心を傷つけるだけでなく、精神的ストレスの大きな要因となります。
逆に、子どもの気持ちや特性を理解しようとする教師の存在は、不登校防止や早期の回復に大きな役割を果たします。
学校内の人間関係のサポート体制が充実しているかどうかも重要なポイントです。
学業へのプレッシャーや成績不振
中学生にとって成績やテストの結果は大きなプレッシャーです。特に高校受験を控える3年生にとっては、周囲の期待や自己評価が強く影響します。「授業についていけない」「テストの点数が低い」といった不安や自信喪失が積み重なり、自己肯定感が低下してしまうと、学校に行くモチベーションが減退してしまいます。
また、勉強の遅れが不安を呼び、それがさらなる不登校を招くという悪循環に陥ることもあります。
そのため、適切な学習支援や励ましが必要です。
家庭環境の影響
家庭内の環境も大きな影響を与えます。両親の離婚や不仲、経済的な困窮、家庭内暴力(DV)や虐待、親の精神的ストレスなど、安定しない環境にいる子どもは心の拠り所を失いがちです。
家庭は子どもにとって最も身近な環境であるため、家庭内の問題が解決されないままでは、学校でのストレスと相まって不登校になるリスクが高まります。子どもが家庭の問題を背負い込んでしまうケースもあるため、周囲の大人が積極的に理解しサポートする必要があります。
発達特性や精神的な不調
ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、HSP(繊細気質)などの発達特性を持つ子どもは、集団生活や教室の環境に強いストレスを感じることがあります。
ざわざわした環境や多人数でのコミュニケーションが苦手なため、学校に行くこと自体が大きな負担になることがあります。
さらに、うつ病や不安障害といったメンタルヘルスの問題を抱える子どもも多くいます。症状の有無にかかわらず、
心の不調に寄り添う支援が必要で、専門医やカウンセラーの関与も重要となります。
親にできる5つのサポートポイント
不登校になると、多くの親は「自分の育て方が悪かったのではないか」と自責の念を抱きやすいものです。
しかし、大切なのは子どもを責めるのではなく、「今この子に何が必要か」を冷静に見極めることです。
ここでは、家庭で実践できる具体的なサポートポイントを5つご紹介します。
1. 子どもの気持ちを否定せず受け止める
「学校に行きたくない」「つらい」といった子どもの言葉を頭ごなしに否定せず、その気持ちを認めましょう。
例えば「そう感じるのは辛かったね」「話してくれてありがとう」と伝えることで、子どもは安心して心を開きやすくなります。気持ちを受け止めることが、信頼関係を築く第一歩です。
2. 学校の話題ばかりせず、日常会話を大切に
学校のことばかり質問すると、子どもはプレッシャーを感じやすくなります。代わりに趣味や好きなこと、好きな食べ物、好きな音楽やアニメなど、日常の些細な話題を増やすことで、子どもとの距離感を縮められます。
「自分を理解してくれている」と感じることが、心の回復につながります。
3. 無理のない生活リズムの改善
昼夜逆転や長時間のスマホ・ゲームは心身の不調を招くため、生活リズムを整えることは重要です。
ただし、急に「早く起きなさい」と強制するのではなく、朝の光を浴びるようにカーテンを開けたり、一緒に朝食を取るなど、徐々に自然な形で生活リズムを戻していく工夫をしましょう。
4. 学校以外の選択肢を提案する
現代では、不登校の子どもに対する学びの場は多様化しています。無理に元の学校に戻ることだけが唯一の道ではありません。
具体的には以下のような選択肢があります。
- フリースクールや適応指導教室:自由な環境で学べる場所
- 通信制中学・高校やオンライン授業:自宅で学習できる方法
- 地域の学習支援団体やNPOによるサポート:社会参加のきっかけ作り
- ボランティア活動や趣味のクラブ活動:自己肯定感向上と交流
子どもの個性や状況に合った居場所や学びの場を見つけることが、自己肯定感の回復や社会復帰の第一歩となります。
不登校支援をしている団体に相談する
不登校に悩む親御さんのための「復学支援スダチ」は、これまでに1,700名以上のお子さんの再登校を支援してきた信頼のサービスです。対象は小学生から高校生までのお子さんを持つご家庭で、再登校率は約90%と高水準。
特徴は、親御さんへのオンラインアドバイスを通じて、親子関係から不登校の根本改善を目指す点にあります。ご家庭に合った関わり方を学びながら、お子さんが安心して前に進めるよう丁寧にサポートします。
5. 親自身もサポートを受ける
子どものために頑張る親も、孤独や不安を感じやすいものです。自身の心のケアも大切にしましょう。
スクールカウンセラーや教育委員会、専門機関、保護者の会、オンラインコミュニティなど、
支援を受けられる場所や仲間を見つけ、相談や情報交換をすることで、心の余裕が生まれます。
親の安定した心は子どもの安心感にもつながります。
学校に行くことだけが「成功」ではない
不登校の解決は必ずしも「学校へ戻ること」だけがゴールではありません。
子どもが自分のペースで社会との関わり方を見つけ、心の健康を回復することが何よりも大切です。
学校以外の居場所や学びを選択することも、勇気ある一歩であり、逃げではありません。
長い時間をかけて、親子でじっくりと歩んでいくことが求められます。
まとめ
- 不登校の中学生は増加傾向にあり、背景にはコロナ禍や価値観の多様化、SNSの影響などがある
- いじめや人間関係、学業のプレッシャー、家庭環境、発達特性やメンタルヘルスの問題など多様な理由が複雑に絡む
- 親の対応は否定せず受け止めること、日常会話の充実、生活リズムの改善、選択肢の提案が重要
- 学校に行くことだけが成功ではなく、子どもの心の健康と自己肯定感の回復を優先することが大切
- 親自身も支援を受け、孤独を避けることで長期的な支援を続けやすくなる