「もう嫌だ…」感情のコントロールが難しい、その苦しみ、一人で抱えていませんか?
急にカッとなったり、理由もなく涙が止まらなくなったり、感情の激しい波に振り回されて「自分はなんてダメなんだろう」と落ち込んでしまう… そんな経験はありませんか? もしあなたが、自分の感情をコントロールできずに苦しんでいるなら、それは決してあなた一人の悩みではありません。そして、それはあなたの「性格が悪い」とか「努力が足りない」せいではないかもしれません。
この記事では、大人の感情コントロールの難しさの背景にある可能性の一つとして「発達障害」に焦点を当て、その原因から具体的な対処法、そして頼れる相談先までを、専門家の知見に基づいて分かりやすく解説します。この記事を読むことで、あなたは自身の困難さへの理解を深め、具体的な対処スキルを学び、必要であれば適切なサポートへと繋がるための一歩を踏み出すことができるでしょう。
なぜ?大人の「感情コントロール困難」考えられる原因と発達障害(ASD・ADHD)
大人の感情コントロールが難しくなる背景には、様々な要因が考えられます。 過度なストレス、慢性的な睡眠不足、ホルモンバランスの乱れ、あるいはうつ病などの精神疾患が影響していることも少なくありません。しかし、そうした要因に加えて、またはそれらと複雑に絡み合って、「発達障害」の特性が関係しているケースも近年注目されています。
発達障害とは、生まれつきの脳機能の働き方の違いによるものです。 代表的なものに、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)があります。重要なのは、これらは「病気」というより「特性(個性)」であり、決して本人の「わがまま」や「怠慢」、「育て方の問題」ではないということです。その特性ゆえに、感情の処理や表現、衝動のコントロールに困難さを抱えやすいのです。
参照:発達障害ナビポータル
ASD(自閉スペクトラム症)の特性と感情の繋がり
ASDのある方は、その特性ゆえに感情のコントロールに困難を感じることがあります。 特性そのものが直接的な原因というより、特性と環境との相互作用によってストレスが蓄積し、感情が不安定になりやすいのです。
- 感覚過敏/鈍麻
- 変化への弱さ/こだわり
- 相手の意図や感情、場の空気を読み取ることが苦手
- 感情の認識・表出の困難
ADHD(注意欠如・多動症)の特性と感情の繋がり
ADHDのある方も、感情のコントロールに特有の難しさを抱えることがあります。 これは「感情調節不全」とも呼ばれ、ADHDの特性と深く関連しています。
- 衝動性
- 感情調節(抑制)の困難
- 不注意
- 多動性
なぜ大人になるまで気づかれにくい?見過ごされてきた背景
「子供の頃は特に問題なかったのに…」と感じる方も少なくありません。 それにはいくつかの理由が考えられます。子供の頃は、多少変わっていても「個性」として受け入れられたり、学業成績が良いなど他の能力で困難さがカバーされていたりすることがあります。また、親や教師のサポートがある環境では、問題が顕在化しにくいこともあります。
しかし、大人になると状況は一変します。 就職、結婚、昇進などライフステージが変化し、より複雑な人間関係や自己管理能力、臨機応変な対応が求められるようになります。その結果、これまで潜在的にあった困難さが表面化し、「生きづらさ」として強く感じられるようになるのです。長年、「自分は怠けているだけだ」「みんな普通にできるのになぜ自分はできないんだ」と自分を責め続けてきた経験を持つ方も、決して少なくありません。
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【実践編】感情の波に飲み込まれない!自分でできる7つの対処法
感情のコントロールが難しいと感じる時、大切なのは「自分を責めること」ではなく、「自分を助けるスキルを身につけること」です。 ここでは、今日から試せる具体的な対処法を7つのステップでご紹介します。全てを一度にやろうとせず、自分にできそうなことから少しずつ試してみてください。
(1) 自分の「トリガー」と「サイン」を知る【自己理解】
感情の波に効果的に対処するための第一歩は、何がきっかけ(トリガー)で感情が揺れ、その前にどんな兆候(サイン)が現れるかを知ることです。 どんな状況(場所、時間、人)、どんな言葉、どんな体調、どんな感覚刺激を受けた時に感情が動きやすいかを把握しましょう。また、感情が爆発する前に、身体(動悸、手の震え、顔が熱くなるなど)や気分(そわそわする、頭が真っ白になるなど)にどんな変化が現れるかにも意識を向けてみましょう。
おすすめは「感情日記」や「アンガーログ」をつけることです。 感情が大きく動いた時に、「いつ」「どこで」「誰と」「何があったか」「どう感じたか」「どう行動したか」「その結果どうなったか」などを記録します。続けることで、自分の感情のパターンが見えてきます。
例:
日時 | 状況(いつ、どこで、誰と、何があった) | 感じた感情(強さも) | その時の考え | 体の反応 | どう行動したか | 結果 |
4/21 10時 | 職場で上司に急な仕事を頼まれた | イライラ(強)、不安(中) | 「またか!」「間に合わないかも」 | 胸がドキドキ、手が少し震える | ため息をついた、断れなかった | 仕事が増えて焦る |
(2) ヤバい!と思った時の「クールダウン」術【応急処置】
感情が高ぶって「まずい!」と感じた時に、そのピークをやり過ごすための応急処置を知っておくと非常に役立ちます。 いわば、感情の「火事」が大きくなる前に初期消火するイメージです。いくつか方法を知っておき、自分に合ったものを咄嗟に使えるように練習しておきましょう。
- その場を離れる
- 呼吸法(腹式呼吸・4-7-8呼吸法)
- 五感に意識を向ける
- 思考を逸らす(しりとりをする、好きな歌の歌詞を思い浮かべる)
(3) ストレスを溜め込まない工夫【予防】
心身のコンディションは、感情の安定と密接に関わっています。 日頃からストレスを溜めず、心と体のエネルギーを満たしておくことが重要です。
- 生活習慣の見直し(睡眠・食事・運動)
- 自分なりのリラックス方法(入浴、音楽鑑賞、読書、自然に触れる)
- 感覚過敏対策(ノイズキャンセリングイヤホン、サングラス)
- 適度なタスク管理(ToDoリストを作成し優先順位をつける)
(4) 考え方のクセに気づき、和らげる【認知の変容】
私たちの感情は、起こった出来事そのものよりも、それを「どう捉えたか(認知)」によって大きく左右されます。 特定の状況でいつもネガティブな感情になる場合、そこには特有の「考え方のクセ(自動思考)」が隠れているかもしれません。
例えば、以下のようなクセはありませんか?
- 白黒思考: 物事を「完璧か、ゼロか」「成功か、失敗か」で判断してしまう。
- べき思考: 「~すべきだ」「~しなければならない」と自分や他人を縛り付けてしまう。
- マイナス化思考: ポジティブな出来事も「たいしたことない」「まぐれだ」と否定的に捉えてしまう。
- 過度の一般化: 一度の失敗を「いつもこうだ」「何をやってもダメだ」と全てに当てはめてしまう。
こうした考え方のクセに気づき、「本当にそうだろうか?」「他の見方はないかな?」と立ち止まって、より現実的で柔軟な考え方を探る練習が、感情の波を穏やかにするのに役立ちます。これは「認知行動療法」と呼ばれる心理療法のエッセンスです。
(5) 気持ちを「伝える」練習【コミュニケーション】
自分の気持ちや考えを適切に伝えられないことも、ストレスや感情の爆発に繋がります。 相手を尊重しつつ、自分の気持ちや要求を正直に伝える「アサーティブコミュニケーション」を意識してみましょう。
ポイントは「I(アイ)メッセージ」で伝えることです。 「You(あなた)は~だ」と相手を主語にするのではなく、「I(私)は~」と自分を主語にして伝えます。
状況 | 良くない例(Youメッセージ) | 良い例(Iメッセージ) |
約束の時間に遅れた相手に | 「なんでいつも遅刻するの!」 | 「(私は)待っていて心配したよ。次は連絡くれると嬉しいな」 |
仕事を手伝ってほしい時 | 「これくらい手伝ってよ!」 | 「(私は)今手が一杯で困っているんだ。少し手伝ってもらえると助かるんだけど、どうかな?」 |
また、感情的になりそうな時は、「少し時間を置いてもいいですか?」と一旦会話を中断したり、伝えたいことを事前にメモにまとめておいたりするのも有効です。
(6) 刺激を減らし、安心できる環境を作る【環境調整】
自分が過ごす環境を、よりストレスの少ない、安心できる状態に整えることも非常に重要です。 特に感覚過敏がある場合は、刺激を減らす工夫が有効です。
- 物理的な環境(パーテーションで仕切る・落ち着けるパーソナルスペース)
- 情報量の調整(SNSを見る時間を制限する・マルチタスクを避ける)
- 周囲への協力依頼
(7) SOSを出す練習
「助けて」と言えることは、弱さではなく、自分を守るための大切なスキルです。 困った時、辛い時に、一人で抱え込まずに誰かに頼る練習をしましょう。
まずは、信頼できる家族や友人、同僚、上司など、身近な人に「ちょっと話を聞いてほしい」「これ、手伝ってもらえないかな?」と小さなことから頼んでみることから始めてみましょう。また、後述する専門機関に相談することも、重要なSOSの出し方です。自分が頼れる人や場所をリストアップしておくと、いざという時に行動しやすくなります。
一人で抱え込まないで!頼れる相談先
「誰かに相談したいけど、どこに行けばいいのかわからない」「こんなことで相談していいのだろうか」 そんな風にためらってしまうかもしれません。でも、専門機関はあなたの悩みに耳を傾け、解決策を一緒に探すために存在します。診断があるかないかに関わらず相談できる場所もたくさんあります。
あなたの状況や目的に合わせて、適切な相談先を選びましょう。 以下に主な相談窓口とその特徴をまとめました。
相談窓口 | 特徴 | 相談できること | 対象者 |
発達障害者支援センター | 各都道府県・指定都市に設置。総合的な相談窓口。 | 発達障害に関する全般的な相談、情報提供、関係機関紹介、家族支援 | 当事者、家族、関係者 |
精神保健福祉センター | 各都道府県・指定都市に設置。精神保健福祉全般。 | 精神的な悩み相談、社会復帰支援、デイケア | 精神的な問題を抱える方、家族 |
精神科・心療内科 | 医療機関。診断、治療(薬物療法、カウンセリング等) | 診断、治療方針相談、薬物療法、心理療法 | 当事者 |
カウンセリングルーム | 民間。心理士によるカウンセリング、心理療法。 | 悩み相談、自己理解、対処法習得、認知行動療法など | 当事者、家族 |
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ) | 全国に設置。就労と生活の一体的支援。 | 仕事探し、職場定着、生活上の困りごと(金銭管理、健康管理など) | 障害のある方(手帳不問の場合も) |
ハローワーク(専門援助窓口) | 公共職業安定所。障害のある方向けの窓口。 | 仕事探し、職業相談・紹介、就職セミナー | 求職中の障害のある方 |
地域障害者職業センター | 各都道府県に設置。専門的な職業リハビリ。 | 職業評価、職業準備支援、ジョブコーチ支援 | 障害のある方、事業主 |
基幹相談支援センター | 市町村主体。地域の障害福祉に関する総合相談。 | 総合相談、サービス利用計画作成、権利擁護 | 障害のある方、家族 |
家族・パートナー・職場の方へ:身近な人ができる理解とサポート
感情のコントロールに困難を抱える方にとって、身近な人の理解とサポートは何よりの力になります。 このセクションは、ご本人だけでなく、ご家族やパートナー、職場の方にもぜひ読んでいただきたい内容です。
まず最も大切なのは、感情の波や一見不可解に見える行動は、本人の「わざと」や「性格の悪さ」が原因ではないかもしれない、と理解することです。 脳機能の特性や、それによるストレス、疲労が背景にある可能性を考えてみてください。
冷静な対応
本人が感情的になっている時は、一緒に感情的になったり、正論で説得しようとしたりせず、まずは冷静に距離を置くことも大切です。安全を確保し、落ち着くまで見守る姿勢が求められることもあります。
安心できる環境
刺激の少ない、静かで落ち着ける環境を整える手助けをしましょう。予定変更は早めに伝える、曖昧な指示を避けるなども有効です。
傾聴と共感(できる範囲で)
「大変だったね」「辛かったね」と、批判せずに気持ちを受け止める姿勢を示すだけでも、本人の安心感に繋がります。ただし、ご自身の負担にならない範囲で行うことが重要です。
具体的なサポートの提案
「何か手伝えることはある?」「何に困っている?」と具体的に尋ね、本人が助けを求めやすい雰囲気を作りましょう。
カサンドラ症候群について
パートナーがASDなどの特性を持つ場合、情緒的な相互関係を築くことの難しさから、もう一方のパートナーが孤立感や抑うつ、心身の不調(頭痛、不眠など)をきたすことがあります。これを「カサンドラ症候群(カサンドラ情動剥奪障害)」と呼ぶことがあります。もしあなたがパートナーとの関係でこのような状態にあると感じたら、一人で抱え込まず、専門機関や支援団体、自助グループなどに相談してください。
職場での合理的配慮
障害者雇用促進法では、事業主に対して、障害のある従業員が能力を発揮できるよう、過度な負担にならない範囲で必要な配慮(合理的配慮)を提供することが義務付けられています。もし、従業員から発達障害の特性に関する相談や配慮の希望があった場合は、本人とよく話し合い、どのような支援が可能か検討することが重要です。産業医や支援機関(地域障害者職業センターなど)に相談することも有効です。
まとめ:感情の波と上手に付き合い、「自分らしい」生き方を見つけるために
この記事では、大人の感情コントロールの難しさと発達障害の関連、具体的な対処法、そして頼れる相談先について解説してきました。
感情のコントロールが難しいという悩みは、決してあなただけの問題ではありません。そして、それはあなたのせいでもありません。生まれ持った脳機能の特性や、それによって生じるストレスが関係している可能性があります。
大切なのは、自分の特性を正しく理解し、感情の波に飲み込まれないためのスキルを身につけ、必要に応じて専門家や支援機関の助けを借りることです。今日ご紹介した対処法や相談先が、あなたの困難を和らげ、より穏やかに、そして「自分らしく」生きていくための一助となれば幸いです。
完璧を目指す必要はありません。うまくいかない日があっても自分を責めず、できたこと、試せたことに目を向けて、小さな一歩を積み重ねていきましょう。 自己理解を深め、自分を大切にする方法を学んでいくプロセスそのものが、あなたの力になるはずです。
あなたは一人ではありません。どうか希望を捨てずに、あなたに合ったサポートを探してみてください。