
はじめに ― なぜ「相談しない家庭」が生まれるのか
引きこもりの問題を抱えていながら、長年にわたってどこにも相談せず、支援にもつながらないまま時間が過ぎていく家庭は少なくありません。
周囲から見ると「なぜ相談しないのか」「支援を拒んでいるのではないか」と見えることもありますが、実際には多くの家庭が「相談しない」のではなく、「相談できない状態」に置かれています。
本記事では、引きこもり家庭が支援につながらない理由を、本人や親の性格の問題としてではなく、家庭内で形成されていく構造や心理の仕組みとして整理していきます。
第1章 「支援を拒んでいる」のではなく「動けない」状態
支援につながっていない家庭の多くは、決して問題を軽く見ているわけではありません。
むしろ、「このままでいいとは思っていない」「何とかしなければ」という思いを長年抱え続けています。
しかし、その思いがあるにもかかわらず、実際の行動に移せない状態が続いてしまいます。
その背景には、引きこもり状態が長期化することで、生活や関係性が家庭内で完結してしまう構造があります。
買い物、食事、金銭管理、対外的なやり取りを親が担い、子どもは家の中で生活を完結させる。
この形が長く続くほど、「外に頼らなくても何とか回っている」という感覚が強まり、支援に向かう動機が生まれにくくなっていきます。
第2章 支援につながらない家庭に共通する3つの前提
1. 「今は何とか回っている」という感覚
生活が破綻していない段階では、危機感があっても切迫感は生まれにくいものです。
収入や住まいが確保されている間は、「今すぐ動かなくても大丈夫」という判断が積み重なっていきます。
2. 家族以外を入れないほうが安全だという思い込み
過去に否定された経験や、制度への不信感から、「外部は怖い」「理解されない」というイメージが形成されることがあります。
その結果、家庭の中だけで守ろうとする意識が強まります。
3. 状況を言葉にすること自体が負担になっている
引きこもりの経緯を説明することは、親にとっても子どもにとっても精神的負担が大きい作業です。
「どこから話せばいいかわからない」という状態のまま、相談の機会が遠のいていきます。
第3章 引きこもり問題が“外に出ない理由”を持ち続ける仕組み
引きこもりの問題は、状況が深刻になるほど動きにくくなるという特徴があります。
時間が経つほど「今さら相談しても遅いのではないか」「説明できない」という思いが強まり、行動のハードルが上がっていきます。
こうして「話さない」「動かない」状態が続くと、それ自体が家庭の安定として機能し始めます。
波風を立てないことが最優先になり、外部につながらない理由が無意識のうちに維持されていくのです。
第4章 親が無意識のうちに抱え込んでしまう心理
多くの親は、「自分の育て方が原因なのではないか」という自責の念を抱えています。
その思いが強いほど、他人に相談することが「責任放棄」のように感じられてしまうことがあります。
また、子どもを傷つけたくない、追い詰めたくないという配慮から、将来や支援の話題を避けるようになるケースも少なくありません。
第5章 子ども側から見た「外の世界」のイメージ
引きこもり状態にある子どもにとって、外の世界は「評価される場所」「否定される場所」として記憶されていることが多くあります。
過去の失敗体験や人間関係の挫折が、相談や支援への強い抵抗感につながり、「誰にも理解されない」という思い込みを生み出します。
第6章 時間の経過が生む見えにくいリスク
表面的には生活が維持されていても、時間の経過とともにリスクは確実に蓄積されています。
親の高齢化、健康問題、経済状況の変化などは、ある日突然表面化します。
準備のないまま変化が起きたとき、家庭は一気に不安定な状態に陥る可能性があります。
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第7章 「相談しない家庭」が直面しやすい分岐点
多くの家庭が支援につながるきっかけは、親の入院や体調悪化、死亡といった突発的な出来事です。
この段階で初めて問題が表面化するケースも少なくありません。
事前に外部との接点があるかどうかで、その後の展開は大きく変わります。
第8章 支援につながる家庭が最初にやっていること
支援につながる家庭の多くは、最初から解決を求めて相談しているわけではありません。
「話を聞いてもらう」「状況を整理する」ことを目的に、外部とつながっています。
本人を動かそうとする前に、環境や関係性を整える視点が重要になります。
第9章 第三者が入ることで起こる変化
第三者が関わることで、親と子それぞれの役割が整理され、心理的な負担が軽減されるケースがあります。
家族だけで抱え続けていた問題が、少しずつ言葉にできるようになることも少なくありません。
第10章 支援につながることは「諦め」ではない
支援を利用することは、家庭としての責任を放棄することではありません。
むしろ、長期化した引きこもり問題に向き合うための現実的な選択です。
一人で抱え込まない判断が、結果的に家族全体を守ることにつながります。
まとめ ― 「動かない理由」を理解することが第一歩
支援につながらない家庭には、必ず理由があります。
その理由を否定するのではなく、理解することが、次の一歩につながります。
引きこもり問題は、時間をかけて形成された構造の中で続いています。
だからこそ、解決もまた、段階的に進めていく必要があります。







