
第1章 物にあたる・暴力行為が起きる背景
怒りの矛先が家庭内に向かう構造
物にあたる行為や親への暴力は、突発的で理解しがたい行動に見えますが、その多くは長期間にわたる心理的・社会的な追い詰められ状態の結果として表面化しています。引きこもり状態が続く中で、社会との接点を失い、失敗体験や否定的な評価を重ねてきた人ほど、自尊心が大きく傷つき、「自分には価値がない」「何をしても無駄だ」という感覚を抱えやすくなります。
家庭は唯一残された居場所である一方、逃げ場のない閉鎖空間でもあります。そのため、外に向けて出せなかった怒りや不安が、最も身近な存在である親に向かって噴き出してしまうのです。
本人も制御できない感情の限界
暴力や破壊行為に及んでいる本人自身が、その行動を冷静に選択しているとは限りません。多くの場合、感情が限界まで高ぶり、理性が働かない状態で行動に出ています。あとになって強い後悔や罪悪感を抱くケースも多く、「なぜあんなことをしてしまったのか自分でもわからない」と語る人もいます。
この段階では、行為そのものを責め立てても根本的な解決にはつながりません。暴力は問題の原因ではなく、すでに限界を超えている状態を示すサインとして捉える必要があります。
第2章 感情的に対応してはいけない理由
正論や説教が逆効果になる理由
親として「間違っていることは間違っている」と伝えたくなるのは自然な反応です。しかし、感情が爆発している最中の本人に正論をぶつけても、理解や反省につながることはほとんどありません。むしろ「否定された」「追い詰められた」という感覚が強まり、さらなる攻撃性を引き出す危険があります。
暴力が起きている場面では、正しさよりも安全の確保と沈静化を最優先に考える必要があります。
我慢し続ける対応の落とし穴
一方で、刺激しないようにと何も言わずに耐え続ける対応も問題です。暴力や破壊行為が黙認される状態が続くと、本人は無意識のうちに「許されている」「止められない」と学習してしまいます。その結果、行為がエスカレートし、家族の心身の安全が脅かされる事態に発展することもあります。
感情的に怒ることと、黙って耐えることは、どちらも状況を悪化させやすい対応であることを理解する必要があります。
第3章 家庭内で起きた直後に取るべき対応
最優先は安全の確保
物にあたる、暴力を振るうといった行為が起きた直後は、話し合いよりも安全の確保を最優先にしてください。無理に言葉をかけたり、説得しようとすると、感情をさらに刺激する可能性があります。危険を感じた場合は距離を取り、別室に移動する、外部に助けを求めるといった判断が必要です。
落ち着いた後の関わり方
本人が落ち着いたタイミングで、「怖かった」「これ以上は一緒に生活できない」と事実と気持ちを淡々と伝えることが重要です。感情をぶつけるのではなく、線引きを示すことで、暴力が許容されない行為であることを伝えます。
第4章 家族だけで抱え続ける危険性
家庭内で問題が固定化する仕組み
家庭内暴力は、家族だけで抱え込むほど長期化・深刻化しやすい問題です。「外に知られたくない」「親の責任だと思われたくない」といった思いが、支援につながる機会を遠ざけてしまいます。その結果、問題は水面下で悪化し、取り返しのつかない事態に至るケースもあります。
親の心身が先に限界を迎える
暴力にさらされ続ける親は、強いストレスや恐怖を抱え、心身の健康を損なうことがあります。親が倒れてしまえば、本人の生活も一気に不安定になります。家族が限界を迎える前に、外部の力を借りる視点が不可欠です。
第5章 支援機関・専門家につなぐ判断基準
生活学業改善のスペシャリスト

らいさぽセンター本校の「生活学業改善プラン」は、引きこもりや不登校、ニートの方が生活リズムを整え、学び直しや社会参加を目指すサポートプランです。全寮制で24時間スタッフ常駐、栄養バランスに配慮した食事、快適な居住環境を提供し、生活改善から次のステップへの自立を支援します。
相談をためらわなくていい
暴力や破壊行為が繰り返されている場合、それはすでに家庭内だけで対応できる段階を超えています。自治体の相談窓口、精神保健福祉センター、引きこもり支援機関など、第三者の介入は問題を悪化させるものではなく、事態を整理するための手段です。
緊急性が高い場合の対応
生命や身体に危険が及ぶ可能性がある場合は、ためらわずに警察や緊急相談窓口を利用することも選択肢に含める必要があります。これは本人を罰する行為ではなく、これ以上事態を悪化させないための安全確保です。
第6章 再発を防ぐために必要な環境調整
親子の距離を再設計する

暴力が起きる背景には、過度に近すぎる親子関係があります。生活空間や役割を見直し、必要であれば一時的な別居や第三者の見守りを導入することで、感情の衝突を減らすことができます。
支援とつながり直す意味
問題行動が落ち着いたあとこそ、就労支援や生活支援、心理的サポートにつなげることが重要です。家庭内だけで解決しようとせず、社会資源を使いながら、本人が少しずつ社会と再接続していく環境を整えることが、再発防止への現実的な道となります。







