近年、日本では女性の引きこもりが深刻な社会問題となっています。
内閣府の最新調査によると、全国の引きこもり者数は推計で約100万人に上り、そのうち女性は約4割を占めています。
本記事では、女性特有の引きこもりの原因や年代別の特徴、支援制度を詳しく解説します。
統計データを交えつつ、引きこもりの当事者やその家族が理解しやすく、具体的な解決策を提案します。
女性の引きこもりとは?
引きこもりとは、単なる「家に閉じこもっている状態」ではありません。
まずはその定義や実状について見ていきましょう。
引きこもりの定義
厚生労働省の定義によると、引きこもりとは、以下の状態を指します。
- 様々な要因により社会参加を回避し、原則的には6ヶ月以上にわたって家庭にとどまり続けている状態
参考:厚生労働省『「ひきこもり」対応ガイドライン(最終版)の作成・通知について』(2003年)
現代社会における女性の引きこもりは、従来の定義を超えて多様化しています。
例えば、SNSでのみコミュニケーションを取る「オンライン引きこもり」や、最低限の外出のみを行う「準引きこもり」など、様々な形態が確認されているのが現状です。
統計で見る女性の引きこもりの実状と割合
2023年の内閣府調査によると、女性の引きこもりについて、以下のことがわかっています。
- 女性の引きこもり者数:約40万人
- 平均引きこもり期間:7.2年
- 最も多い年齢層:30代後半〜40代(全体の38%)
- 増加率:過去5年で約1.5倍に
参考:内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和5年実施)」
日本全国には約100万人の引きこもりが存在し、そのうち約40%が女性です。
特に30代後半から40代にかけての女性の引きこもりが増加傾向にあり、性別や年齢による影響が大きいことがわかっています。
女性特有の引きこもり原因
ここからは、年々その原因が多様化してきている引きこもりについて、具体的にどのような原因があるのかをご紹介します。
対人関係の恐怖
内閣府の調査によると、引きこもり状態を引き起こしている女性の主な要因として、以下のように、対人関係への恐怖に関する項目が報告されています。
職場や学校での人間関係のつまずき | 45.1% |
就職活動の失敗や挫折経験 | 23.7% |
不登校経験 | 21.9% |
参考:内閣府「生活状況に関する調査」(2019年)
女性は一般的に対人関係を重視する傾向があり、学校や職場での人間関係の問題や、いじめが引きこもりの主な原因となることがあります。
また、SNSの普及により、オンライン上でのトラブルや人間関係のストレスも新たな要因として認識されているのです。
精神疾患
うつ病、不安障害、適応障害など、女性に多い精神疾患は、社会参加を困難にし、引きこもり状態やそれを長期化させる要因となっています。
- うつ病・気分障害:女性の外来患者数は男性の約1.5倍
- 不安障害:女性の年間受療率は10万人当たり204人(男性の1.4倍)
- 適応障害:20-30代女性の受診が増加傾向
参考:厚生労働省「患者調査」(2020年)
近年では、特に20-30代の若い世代での予防と早期支援の重要性も指摘されており、ホルモンバランスの乱れがこれらの症状を悪化させることもあります。
性被害・DV経験
女性は、性被害やDV(ドメスティック・バイオレンス)によるトラウマで引きこもり状態に陥ることが多く、これらの被害が心身に深い傷を残し、外出や他者との接触を避ける理由となります。
実際に、内閣府男女共同参画局の調査によると、以下のことが報告されています。
- DV被害を受けた女性の約12%が外出や社会活動を制限された経験がある
- 精神的暴力を受けた女性の21.8%が人間関係を制限された
- DV被害後、社会的な孤立を経験した女性は28.3%
参考:内閣府男女共同参画局「男女間における暴力に関する調査報告書」(2023年)
暴力被害を原因とするPTSDや、対人関係への不信感が複合的に作用して引きこもり状態になることもあるため、トラウマケアと併せた包括的な支援が必要とされています。
社会復帰の難しさ
育児や介護によって一度社会から離れると、女性は復帰が困難になるケースが多く、これが引きこもり状態につながるケースもあります。
- 女性特有の社会復帰を妨げる要因
- 育児や介護との両立の困難さ
- 年齢による就職差別
- 長期ブランクによるスキル不安
- 性別による賃金格差
さらに、性別による賃金格差や雇用機会の不平等も、社会復帰を躊躇する要因の一つとされています。
ホルモンバランス
月経前症候群(PMS)や更年期障害など、女性特有のホルモンバランスの変化が心身に影響を与え、引きこもり状態を促進する場合があります。
- 女性ホルモンの変動が心身に与える影響
- 月経前症候群(PMS)による気分の波
- 更年期障害による不調
- 妊娠・出産後のホルモンバランスの乱れ
特に、更年期は身体的・精神的な不調が増す時期であり、引きこもり状態を防ぐためにも、適切なケアを受けることが必要です。
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年代別:女性が引きこもりやすい時期
年齢に関係なく陥る引きこもり状態ですが、女性が特に引きこもり状態となりやすい時期があります。
ここからは、その具体的な時期についてご紹介します。
思春期
女性が引きこもり状態になりやすくなる時期の一つとして挙げられるのが、思春期です。
文部科学省の調査によると、近年の不登校児童生徒数は過去最多を記録しています。
この調査では、特に以下のような要因が不登校、そして引きこもり状態のきっかけとなることが報告されています。
- 学校生活における課題
- 無気力、不安な気持ちの継続
- いじめを除く友人関係をめぐる問題
- 学業の不振
- 思春期特有の心身の変化による影響
- 第二次性徴に伴う身体的変化への不安
- 容姿や体型に対する周囲からの評価への過敏さ
- 友人関係における同調圧力やストレス
- 家庭に係る状況
- 親子関係の変化
- 家族との価値観の相違
- 家庭内での居場所の喪失感
参考:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(令和4年度)
特に女子生徒の場合は、対人関係の感受性が高く、些細なトラブルが深刻な心の傷となりやすいという特徴があります。
また、SNSの普及により、学校外でも継続的なストレスにさらされやすい環境にあることも、現代特有の課題として認識されています。
思春期の引きこもり状態は、早期に対応することで、将来的な社会参加に影響を与えるリスクを減らすことができます。
就職したての時期
就職したての時期は、以下のような原因により、女性が引きこもり状態になりやすくなります。
- 新社会人の女性が直面する課題
- 理想と現実のギャップ
- 職場での人間関係
- 仕事と私生活のバランス
- 将来への不安
- 経済的プレッシャー
初めての職場環境に適応するストレスや、職場での人間関係の悩みは、引きこもり状態になることに直結します。
特に期待していたキャリアと現実のギャップが大きい場合は、精神的な負担となりやすいです。
専業主婦の引きこもり問題
近年、専業主婦の引きこもり状態が、社会全体から見過ごされがちな問題として浮かび上がってきています。
専業主婦の引きこもり状態は個人の健康や家庭内の安定に影響を与えることが多いため、深刻な課題として捉える必要があります。
ここからは、専業主婦が引きこもり状態になりやすい原因について詳しく見ていきます。
専業主婦が引きこもりになりやすい原因とは
専業主婦は、家庭内での役割が限定され、社会とのつながりが希薄化しがちです。
家庭内の役割に集中し、外出の機会が減少することで、無意識のうちに引きこもり状態に陥ることがあるのです。
以下で、専業主婦が引きこもり状態になりやすい具体的な原因についてまとめました。
- 社会との繋がりの希薄化
- 家事のやりがい不足と無気力感
- 更年期による身体の不調
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①社会との繋がりの希薄化
専業主婦は家事や育児に専念することで、徐々に社会との接点が失われることが多いです。
特に、家族以外の他者との交流が減少することで、孤立感が強まり、引きこもり状態に陥るリスクが高まります。
- 社会との繋がりの希薄化の具体例
- 育児に伴う外出機会の減少
- 職場を離れることによる人間関係の縮小
- 地域コミュニティとの関わりの低下
- 自己実現の機会の減少
②家事のやりがい不足と無気力感
日常生活において、専業主婦の方は以下のような精神的な負担を感じています。
- 単調な生活の繰り返しによるストレス
- 家事労働の評価されにくさ
- 社会的な役割の喪失感
- 経済的自立への不安
単調な家事の繰り返しや評価されにくい環境は、無気力感や倦怠感を引き起こしやすくなります。
やりがいや達成感が感じられない状態が続くことで、外出する意欲が低下してしまうのです。
特に、子育てが一段落した後や、地域コミュニティとの関わりが少ない環境では、社会的孤立のリスクが高まることが懸念されています。
③更年期による身体の不調
更年期はホルモンバランスの乱れにより、身体的・精神的な不調が現れます。
これにより外出意欲が減退し、引きこもり状態が進行することがあります。
- 40-50代の女性に特有な身体の不調
- ホルモンバランスの乱れ
- 不眠や疲労感
- 気分の変動
- 自律神経の乱れ
引きこもり女性のための支援制度
ここからは、女性が引きこもり状態から脱出するために利用できる支援制度を紹介します。
- 地域若者サポートステーション(サポステ)
- 女性専用の相談窓口
- 精神保健福祉センター
一つずつ詳しく見ていきましょう。
地域若者サポートステーション(サポステ)
地域若者サポートステーション、通称「サポステ」は、15歳から49歳までの若年層を対象とした就労支援機関です。
引きこもりやニート状態にある若者に対し、社会復帰や就労に向けた段階的なサポートを提供しています。
ここでは、専門の相談員が個別のカウンセリングを行い、職業適性を見極めるための職業体験やインターンシップの機会を提供していることが特徴です。
また、コミュニケーションスキルの向上を目的としたワークショップやグループ活動もあり、社会での再スタートを目指す若者を支援してくれます。
サポステは全国に展開されており、地域ごとの特性に合わせたサポートが受けられるのが魅力です。
女性専用の相談窓口
女性専用の相談窓口は、女性が抱える特有の問題に対して専門的なサポートを提供する場所です。
引きこもりや対人関係の悩み、性被害、DV(家庭内暴力)など、女性ならではの問題に対して、安心して相談できる環境が整っています。
相談内容はプライバシーが守られており、専門のカウンセラーや心理士が対応します。
また、法的なサポートや医療機関との連携を通じて、総合的な支援が受けられます。
多くの場合、電話やオンライン相談も可能で、直接対面で話しづらい問題も気軽に相談できる体制が整っているため、引きこもり状態にある女性が第一歩を踏み出すきっかけとなることが多いです。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、精神的な健康問題に対して専門的なケアを提供する公的な施設です。
引きこもりの原因となりやすいうつ病や不安障害、摂食障害などの精神疾患に対して、診断やカウンセリング、リハビリテーションなどの支援を行います。
また、ここでは心理士や精神科医、ソーシャルワーカーなどの専門職が連携して、個人に最適な治療プランを提供してもらえるという特徴があります。
早期の介入や継続的なサポートを通じてメンタルヘルスの改善を図り、社会復帰のための支援を行ってくれるため、引きこもり状態にある方やその家族の安心感につながるでしょう。
家族向けのサポートも充実しているため、周囲がどのように支援できるかについての助言も受けることができます。
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家族ができること:支え方と注意点
家族や支援者が引きこもり女性をサポートする際に、気をつけるべき点をご紹介します。
本人のペースを尊重する
無理に外出を促すのではなく、本人の意志やペースを大切にすることが重要です。
コミュニケーションを絶やさない
一方的な会話ではなく、適切なタイミングで対話を心がけ、孤独感を和らげます。
専門家への相談を検討する
専門家のアドバイスを得ることで、より適切な対応が可能となります。
強制的な対応は避ける
強制的な外出や圧力をかけることは、逆効果になりかねません。
小さな変化を認め、褒める
ほんの少しの進展でも、前向きに評価し、本人の自己肯定感を高めるようにしましょう。
よくある質問
ここからは、女性の引きこもり状態に関するよくある質問にお答えします。
Q.専業主婦は引きこもりに含まれる?
家事や育児をしている専業主婦でも、外部との接触が極端に減少している場合、引きこもりとみなされる可能性があります。
Q.引きこもり期間は平均何年?
内閣府の調査では、女性の引きこもり期間は平均して7年です。
ただし、適切な支援を受ければ短期間での改善も可能です。
Q.社会復帰は可能?
適切な支援と環境整備があれば、引きこもり状態から社会復帰することは十分に可能です。
特に家族や専門家のサポートが大切です。
Q.引きこもりやニートにとって結婚や就職が難しい理由とは
引きこもり状態やニートの女性にとって、結婚や就職が難しいとされる理由はいくつかあります。
①社会経験の不足
引きこもり状態が続くと、社会での実務経験や対人スキルが不足し、それが就職や結婚の際に大きな障害となります。
②対人関係の不安
長期間にわたって人と接する機会が少ないと、再び対人関係を構築することに強い不安や恐怖を感じやすくなります。これが婚活や就職活動に対しての意欲低下につながります。
③経済的な問題
引きこもりによって収入源がなくなり、経済的に自立することが難しくなります。この状況では、結婚や独立、就職の選択肢を狭める原因になります。
これらの理由が複数合わさり、結婚や就職の難しさへとつながります。
Q.引きこもりを脱出するためのアプローチとは
引きこもり状態から脱出するためには、段階的かつ長期的なサポートが必要です。
以下で、いくつかのアプローチをご紹介します。
①小さな一歩を踏み出す
いきなり外に出るのではなく、まずは家の中でできる簡単な作業や趣味から始め、自分のペースで少しずつ活動範囲を広げていくことが重要です。
②オンラインコミュニティの活用
自宅からでも参加できるオンラインのコミュニティやサポートグループを利用することで、外出することなく他者との交流を徐々に再開することができます。
③カウンセリングやメンタルヘルスのケア
心理的な支えが不可欠です。カウンセリングやセラピーなどを通じて、自分の気持ちや悩みを話すことで、心の整理を進め、回復を促します。
Q.社会復帰のために利用できるステップとは
引きこもり状態から社会に復帰するためには、計画的なステップを踏むことが重要です。
以下は、そのステップ例です。
①まずは自宅でできる作業や趣味を開始する
家の中で行える仕事や趣味から、自己肯定感を高める活動を始めることが良い一歩となります。
②ボランティアや地域活動に参加する
最初の段階では、短時間のボランティア活動や、地域の行事に参加することから始めてみるのも効果的です。
プレッシャーの少ない環境で少しずつ外との繋がりを作ることができます。
③ステップアップの支援を受ける
「サポステ」や就労移行支援機関など、段階的に社会復帰をサポートしてくれる機関の助けを得ることも有効です。
まとめ
女性の引きこもりは、精神的な問題や対人関係のトラウマ、家庭内の役割やホルモンバランスなど、複合的な要因が絡み合うことで引き起こされます。
特に、性別や年齢による社会的期待や役割が影響することが大きく、専業主婦や中高年の女性にはその年代特有の課題も存在します。
しかし、適切な支援制度の利用や、家族の理解と協力があれば、引きこもり状態から脱出し、再び社会に参加することは十分に可能です。
引きこもり問題は個人や家族だけで解決するのは難しいケースが多いため、専門家や支援団体の力を借りながら、段階的に前向きなアプローチを試みることが重要となります。
支援を求めることは決して恥ずかしいことではなく、より良い未来への第一歩だといえるため、少しずつ社会復帰のためのステップを踏んでいきましょう。