ドン横キッズとは、名古屋・栄の地下街にある「ドン・キホーテ」前の広場に集まる少年少女たちのことです。
現在は、「ドン・キホーテ」前の広場の閉鎖に伴い、池田公園やオアシス21周辺に場所を移動して集まっています。
彼らはメディアでも頻繁に取り上げられ、その存在が注目されています。
しかし、彼らが抱える悩みや置かれた環境、そして彼らを支える支援の必要性については、十分に理解されていないのが現状です。
本記事では、ドン横キッズの実態に迫ります。なぜ彼らは集まるのか、どのような悩みを抱えているのか、そして、彼らに必要な支援とは何か。
この記事でわかること
ドン横キッズが直面する社会問題や必要な支援を探り、彼らの声に耳を傾け、彼らの未来について考えます。
ドン横キッズとは?
「ドン横キッズ」とは、名古屋・栄にある「ドン・キホーテ栄本店」の横(通称:ドン横)に集まる子どもたちを指す言葉です。
そのほかには、東京・歌舞伎町の新宿東宝ビル横は「トー横」、大阪・ミナミのグリコの看板下は「グリ下」と呼ばれており、様々な事情でそこに集まる子どもたちと、巻き起こる犯罪や売春行為等が社会問題となっています。
しかし、名古屋のドン横は、新たなシンボルタワーの建設開始により2022年の6月に閉鎖されました。
閉鎖を受けても解散することはなく、ドン横キッズたちは、同じ名古屋市中区栄の別の公園「池田公園(通称:池公)」やオアシス21周辺に移動して集まるようになりました。
彼らは家庭や学校など、自分が属するべき場所を見つけられなかったり、社会の中で孤独感を抱えたりする中で、同じように居場所を探す仲間と過ごせるこの場所を選んで集っています。
同じ境遇を持つ若者たちが自然と集まることで形成された「非公式のコミュニティ」とも言えるでしょう。
ドン横キッズの特徴は?生活は?
年齢は小学生から高校生までと幅広く、家出や非行など様々な理由からドン横キッズになっています。
そしてドン横は、単なる集まりの場ではなく、家庭や学校で居場所を失った若者たちの「逃げ場」や「一時的な心の拠り所」としても機能している場合があります。
彼らの多くは、家庭内で親との不和や経済的困難、育児放棄(ネグレクト)を経験しており、家に居場所を見つけられない状態の子どもたちです。
中には、居場所があったとしても、日頃とは違った他の楽しみを求めてドン横に集まる子どももいます。
基本的にはゲームセンターやカラオケで過ごしたり、路上やネットカフェ、ラブホなどの安いホテルで寝泊まりをしており、仲間同士でお金を出し合ってやりくりをしています。
泊まるためや生活するためのお金は、バイトだけでなく、パパ活や援助交際を行うことで稼ぐことが多いです。また、闇バイトや違法薬物の販売を行って稼ぐ子どももいます。
そのため、性被害や薬物問題など、様々なリスクと隣り合わせの中で生活をしているのです。
また、稼いだお金を生活費としてだけではなく、ホストやコンカフェへ貢ぐことが現在の社会問題となっています。
一度訪れてはハマってしまい、貢ぐために風俗店で働く子や、”立ちんぼ”を繰り返し行う子が増えている現状です。
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ドン横キッズが抱える悩み
では、ドン横キッズには具体的にどんな悩みがあるのでしょうか。家庭環境と教育や学校生活の2つに分けて、詳しく解説します。
家庭環境の問題
まず、家庭環境の問題として以下のようなものが挙げられます。
- 親との不和
- 親の病気・アルコール,薬物依存
- 家庭内暴力(身体的,精神的虐待・性的虐待など)
- 家庭の崩壊・親の不在(離婚・ネグレクトなど)
- 貧困・経済的困難による生活の不安定さ
本来、家庭は安心して過ごせる場所であるべきですが、彼らにとっては心の拠り所どころか、むしろ逃げ出したい場所になってしまっているケースが少なくありません。
親との不和や親の病気、アルコールや薬物依存などが原因で、家庭が安心できる場所ではなくなり、心の安定を失うケースが少なくありません。
また、家庭内暴力(身体的・精神的虐待、性的虐待)を受けている若者もおり、自分の存在を否定される感覚から逃げ出さざるを得ない状況に追い込まれます。
さらに、離婚や育児放棄(ネグレクト)による家庭の崩壊や親の不在は、若者たちに深い孤独感を与えます。
貧困や経済的困難により生活が不安定な家庭では、夢や希望を抱く余裕がなくなり、現実から目を背けるようになります。
家庭という本来の居場所を失った若者たちは、孤独や不安を抱えたままグリ下を「逃げ場」として選びますが、根本的な問題が解決されない限り、苦しみは続いていきます。
教育や学校生活での問題
次に、教育や学校生活での問題として以下のようなものが挙げられます。
- いじめ・ハラスメント(精神的,肉体的な苦痛)
- “普通”や“ルール”と合わず馴染めない
- 不登校経験
- 教師やスクールカウンセラーの対応不足
ドン横に集まる若者たちの中には、教育や学校生活での問題が原因で孤立し、自分の居場所を失った人が多くいます。
特に深刻なのが、いじめやハラスメントです。
仲間外れや暴言、暴力といった精神的・肉体的な苦痛を受けた結果、学校に行けなくなった若者も少なくありません。また、SNSを通じた誹謗中傷や晒し行為が加わることで、さらに追い詰められるケースもあります。
さらに、学校の「普通」や「ルール」に馴染めずに浮いてしまう若者もいます。
集団行動を求められる環境で自分を押し殺さなければならず、「自分はこの場所にいてはいけない」と感じるようになります。その結果、不登校を経験し、さらに社会とのつながりを断たれてしまうことがあります。
また、教師やスクールカウンセラーの対応不足も、若者たちの孤立を助長しています。
いじめや悩みを相談しても「それくらい我慢しなさい」と軽視されたり、「自分の努力不足」と責任を押し付けられることで、心の支えを失ってしまうケースが多いのです。
学校本来の役割であるはずの「安心して学べる環境」が、逆に若者を追い詰める場所になってしまっています。
ドン横キッズが集まる5つの理由
次に、危険が伴うドン横になぜ何度も訪れ集まるのか、その理由5つを分かりやすく説明します。
- 孤独を癒せる「逃げ場」としての役割
- 同じ境遇の仲間とつながれる場所
- 自分らしさを表現できる空間
- 承認欲求を満たせる場所
- 日常を忘れられる「非日常の空間」
1.孤独を癒せる「逃げ場」としての役割
彼らは、自分の存在を否定されるような環境に身を置いてきたことが多く、「自分の居場所がない」と感じる孤独感を抱えています。
家にいても安心できない、学校に行っても理解されないといった状況が、彼らを「どこにも属せない」という絶望に追い込んでいるのです。
そんな中、ドン横は誰でも気軽に立ち寄れる場所として、こうした若者たちに解放感を与えています。
2.同じ境遇の仲間とつながれる場所
家庭や学校では「誰にもわかってもらえない」「自分は一人ぼっちだ」と感じていた若者たちが、ドン横では似たような悩みや経験を持つ仲間と出会うことができ、「自分だけが孤独ではない」と感じられる安心感を得ることができるのです。
また、ドン横では新しい友人や仲間をSNSで募ることも一般的です。
「ドン横で会おう」「ドン横にいる」といったSNS投稿をきっかけに新たなつながりが生まれ、さらにコミュニティが広がっていくことがあります。
彼らにとって、この場所は単なる集合場所ではなく、人間関係を築き、孤独を埋めるための大切な空間となっています。
家庭や学校で否定されてきた自分自身を受け入れてもらえたり、話を聞いてもらえたりすることで、「ここにいてもいい」という想いを実感することができるのです。
3.自分らしさを表現できる空間
家庭や学校で「普通でいること」を求められ、自分の個性を押し殺してきた若者たちにとって、ドン横は、自分らしさを自由に表現できる特別な空間となっています。
この場所では、親や教師、同級生などの目を気にする必要がなく、誰にも縛られずに「本当の自分」をさらけ出せる解放感があるのです。
ファッションや髪型、メイクといった外見を通じて、自分の個性を存分に表現している場合も少なくありません。
例えば、派手な髪色やストリート系ファッション、地雷系ファッションなどを身にまとい、「自分はここにいる」という意思表示をしています。
同じように自分を表現したい若者たちが集まることで、相互にその自由を認め合う空間が形成されており、「自分を取り戻せる場所」としての意味を与えているのです。
4.承認欲求を満たせる場所
ドン横で写真や動画を撮影し、InstagramやTikTok、Twitterに投稿することで「自分の居場所」や「自分の存在」をフォロワーや仲間に示しています。
SNS上での反応や「いいね」は、彼らにとって自分の個性が認められた証であり、日常では得られない承認を感じる瞬間です。
また、自分らしいスタイルの発信は、自己肯定感を得るための手段でもあるのです。
さらに、SNS上のつながりだけでなく、リアルな人とのつながりを体感できる場所でもあります。
実際に会って言葉を交わすことで、「つながっている」という確かな実感を得ているのでしょう。
SNS上でのつながりを広げたり、仲間内での存在感を示すためにも、ドン横は重要な場所となっています。
5.日常を忘れられる「非日常の空間」
名古屋・栄という繁華街の中心に位置し、昼夜問わず人々が行き交う賑やかな雰囲気や独特のエネルギーが、日常生活からの解放感を与えてくれます。
特に夜間には、きらびやかなネオンや活気のある街並みが、若者たちにとって「どこか特別な場所」に感じられることが多いようです。
また、学校や家庭に居場所があったとしても、楽しさを求めてドン横に集まる若者はいます。
日頃の生活では感じることのできない楽しさを感じるため、足を運んでしまうのでしょう。
ドン横キッズが直面する社会問題
ドン横に集まる若者たちの現象は、彼らの孤独や居場所の喪失といった個人的な問題にとどまらず、社会全体に影響を及ぼす社会問題を引き起こしています。
- 公共マナーの問題
- オーバードーズ(薬物の過剰摂取)
- 違法薬物への依存
- 未成年の飲酒・喫煙
- 援助交際や性被害
- ネット上での晒しや誹謗中傷
- 反社会的勢力による搾取
- 自傷行為や自殺
公共マナーの問題
ドン横に集まる若者が引き起こす騒音やゴミのポイ捨ては、周辺住民や観光客に迷惑をかけ、地域の環境悪化を招いています。
また、深夜までの集まりが続くことで治安への不安を感じる声も多く、地域住民との摩擦が生じています。
オーバードーズ(薬物の過剰摂取)
精神的な不安や孤独感から逃れるために、薬物の過剰摂取(オーバードーズ)を行うケースが増えています。
市販薬や処方薬を大量に摂取し、一時的な安心感を求める行為が命の危険を伴う深刻な問題となっています。
特に仲間内で薬物を共有することや、SNSを通じて過剰摂取の行動が広がることも問題視されています。
違法薬物への依存
反社会的勢力や悪意を持った大人に接触する機会が増え、違法薬物に手を出すケースも報告されています。
一度使用してしまうと依存に陥りやすく、精神的・身体的な健康を損なうだけでなく、犯罪に巻き込まれるリスクも高まります。
また、違法薬物の使用は彼らの生活をさらに不安定化させ、社会復帰の障害にもなります。
未成年の飲酒・喫煙
未成年が飲酒や喫煙を行う姿が日常的に見られます。
自由な雰囲気の中で仲間意識を強める行為として行われますが、未成年の健康に深刻な影響を与え、法的リスクも伴います。
また、こうした行動はルールを軽視する態度を助長し、さらなる問題行動を引き起こす要因にもなります。
援助交際や性被害
経済的困難や孤独感から援助交際に走るケースがあります。
こうした行動は一見簡単にお金を稼げる手段に見えますが、背後には搾取や暴力、精神的なダメージが隠れています。
性病に感染したり、妊娠したりするケースは多く、様々なリスクや責任を背負うことになるかもしれません。
また、反社会的勢力に利用されることで、性被害に巻き込まれるリスクも高まります。
ネット上での晒しや誹謗中傷
ドン横での行動がSNSに拡散されることで、若者がネット上で晒されたり、誹謗中傷を受ける問題も深刻化しています。
過激な行動やトラブルの様子が拡散されることで、当事者が精神的に追い詰められ、さらなる孤立を招くことがあります。
また、個人情報が流出し、2次被害が発生するケースも少なくありません。
反社会的勢力による搾取
経済的困窮や居場所を失った若者たちは、反社会的勢力の標的となり、搾取されるリスクがあります。
簡単に稼げると誘われ違法行為に加担させられたり、精神的に支配されるケースもあります。
これにより、若者たちの生活はさらに不安定化し、将来への希望が奪われてしまいます。
自傷行為や自殺
孤独感や絶望感から自傷行為や自殺未遂に至る人もいます。
家庭や学校での孤立が原因となり、心の拠り所を見つけられないまま、過度なストレスに押しつぶされるケースが多いです。
例えば、リストカットしたときの血を見ることや痛みを感じることで生きている実感を得る若者もいます。
心の傷を癒すために、体を傷つけて落ち着くための行為ですが、命に関わる危険な行為です。
一時的に仲間とつながることで心が救われることもありますが、根本的な問題は解決されません。
ドン横キッズに今必要な支援
ドン横キッズが関わるこれらの問題は、単なる個人の選択ではなく、家庭環境や社会のサポート不足など、複雑な背景が絡み合っています。
彼らが安全に過ごし、再び社会とつながるためには、次のような対策が必要です。
- 経済的な支援、安心して過ごせる居場所の提供
- 教育や就労支援
- メンタルヘルスケアの充実
- 病気への手当てや相談場所の設置
- 社会的な偏見をなくす取り組み
- 予防的な取り組みの強化
経済的な支援、安心して過ごせる居場所の提供
誰でも気軽に訪れることができる支援施設やカフェのような「居場所」を提供することが重要です。
自由に休めるスペースを設けることで、若者たちが安心して心身を落ち着かせることができます。
また、これらの施設では、温かく迎え入れてくれるスタッフやカウンセラーが常駐し、誰かに自分の悩みを聞いてもらうだけでも、孤独感や不安が軽減され、社会とのつながりを感じられるようになります。
また、経済的困窮に苦しむ若者たちに対する直接的な支援も不可欠です。
住む場所がない若者にはシェルターや一時的な宿泊施設を提供し、安定した生活基盤を確保する必要があります。
また、食事や生活用品を無料で提供する仕組みや、一時的な金銭的サポートを行うことで、日々の生活の不安を軽減します。
教育や就労支援
若者たちが将来の希望を取り戻すためには、教育や就労支援が欠かせません。
不登校や中退を経験した若者が再び学び直せる仕組みや、基礎的な学力を補うサポートが必要です。
また、働きたい意欲があってもスキルや経験が不足している若者には、職業訓練やキャリア相談を提供し、就労のチャンスを広げます。
これにより、彼らが安定した生活を築き、社会との接点を持てるようになります。
メンタルヘルスケアの充実
孤独感や自己否定感、トラウマに苦しむ若者たちにとって、メンタルヘルスケアは非常に重要です。
カウンセリングや心理的サポートを提供できる体制を整備し、若者が気軽に相談できる環境を作ることが必要です。
また、オンライン相談窓口や支援アプリなどを活用することで、場所に縛られずにサポートを受けられる仕組みを提供します。
彼らが心の健康を取り戻すことで、自信を持って社会に戻る準備を整えます。
病気への手当てや相談場所の設置
若者たちの不規則な生活や過酷な環境が原因で、栄養不足や睡眠不足、体力の低下といった健康問題が生じやすくなっています。
さらに、性被害に巻き込まれることによる怪我や性感染症(性病)への感染リスクも深刻です。HIV、クラミジア、淋病といった性感染症が拡がる可能性が指摘されています。
これらの感染症は適切な治療を受けないと、身体的な合併症を引き起こしたり、他者への感染源となる恐れがあります。
相談しにくい内容を気軽に話せる場所を設置することで、子どもたちの未来を守る迅速な対応が可能になります。
また、予防方法の啓発や被害の拡大を防ぐことができるかもしれません。
社会的な偏見をなくす取り組み
ドン横に集まる若者たちは、社会から偏見や否定的な目で見られることが少なくありません。
こうした偏見は、彼らの孤立をさらに深める要因となっています。
若者たちの背景や苦しみを知り、彼らをサポートする意識を社会全体で育むことが必要です。
メディアや地域活動を通じて、若者を否定せずに尊重し、支え合う文化を広める取り組みが求められます。
予防的な取り組みの強化
若者が孤立や困難な状況に陥る前に、早期介入を行う仕組みが必要です。
学校や地域でいじめ防止や進路相談を充実させ、家庭環境に問題を抱える若者を早期に発見して支援する体制を整備します。
また、若者が安心して相談できる窓口を広く周知し、困難な状況に追い込まれる前に適切なサポートを提供することが重要です。
問題の予防に取り組むことで、若者の将来を守る環境を作り出します。
専門家があなたの家族に寄り添います。

「部屋から出てこない」「会話が成り立たない」そんな日々に疲れていませんか?
まだ諦めるには早すぎます。
私たち『らいさぽセンター』は多くの引きこもりの若者たちとそのご家族に寄り添ってきました。

まずは、引きこもり支援の専門家にあなたの話を聞かせてください。
まとめ
ドン横は、若者たちにとって「非日常の空間」であり、仲間との交流や自己表現の場として大きな意味を持つ存在です。
しかし、その一方で地域社会との摩擦や性被害、健康問題などの課題も抱えています。
これらの問題に対応するためには、相談窓口や医療支援などの支援体制を整え、若者たちが安心して過ごせる環境を作ることが重要です。
若者たちの姿を理解し、見守りや支援を通じて新しい可能性を育むことが、未来の社会をより良いものにする第一歩と言えるでしょう。